通信を使えば,いとも簡単に人から情報を得ることができる.ある分野に精通 した人間がいると,その人に直接メールで質問することもできるし,その人の 参加するボードで話を聞くことができる.時間と距離を超えて人と交流するこ とができ,また情報を得ることができるので,実に便利である.
ところが,最近これで厄介な思いをすることが増えた.ちゃんと自分で調べれ ばわかることを,すぐに人にメールや電子会議できく連中が増えて来たのだ. きけば教えてもらえる.だから,すぐにきく.その繰り返しで,今後はこっち が教えてあげないと,不義理をしているように思われたりするのだ.
こういう輩の困ったことは,親切に教えれば教えるほど依存がひどくなること である.助けを求められたら,誰しも最初は懇切丁寧に教えようとするだろう. が,「教えられ慣れ」してしまった者は,もはや自分で調べるという意志もな くなり,それどころかわからないのは,本の説明が下手だからだ,とかちゃん としたデータが公開されていないからだとか,とにかく人やもののせいにしは じめる.こうなるともう手遅れだ.あげくの果てに教えてくれないのは,その 人が不親切だからだと怨むんだから.
人にメールや電子会議の発言を求めるということは,人の時間と労力を要求す ることだ.そんなことにはおかまいなしに初歩的なことを質問する人間にはホ トホト困らされる.
昔,駆け出しのドイツ語教師であった頃,「先生,この文はどういう意味です か?」と質問してくる学生がいると,懇切丁寧な説明をしたものだった.この 単語の意味はこうで,文の構造はこれこれで,というふうに.が,しばらくたっ て,そういうふうに熱心に教えすぎるのは教育効果がないことがわかった.
学生は「あの先生にきけば何でも教えてもらえる.」と思って安易に質問に来 るようになるのだ.最初は単語ぐらいは自分で調べていたのに,そのうちにそ れすらしないで,一切自分で努力することなく教師に依存しようとするのだ. で,「まずは自分で調べろ」などと言われると逆怨みをするのだ.
最近のパソコン通信でも似たような連中が多い.最初に親切にすると,全然努 力しなくなっちゃう.あげくのはてにメール攻撃でこっちの時間を食いまくる 人たち.とっても迷惑です.
この連中の一番怖いところは,「マルテさんにきけば,教えてもらえるよ.」 なんてペラペラ別の仲間たちにしゃべること.そうすると,ねずみ算式に自分 で学習しない者たちからのメッセージが増えて,こっちはパンクしてしまう.
専門家は専門の領域の勉強に膨大な時間とお金をかけているってことがわから ないのかしら.専門領域でなくても,その人が熱心に追求している事柄には, ずいぶん時間と労力がかかっているはず.どうして,それがわからないの?
パソコン通信では,誰もが一応平等ですね.通信では,顔もなければ,年齢も なければ,職業も,経歴も,性別も関係なく,同じ舞台の上で語りあえるでは ありませんか.だから,通信は面白いのだし,有益なのでしょうが,マナーを 忘れてもらっては困ります.自分でとことん調べてから質問すべきです.
ドイツの大学では,教員に質問に行く時は,"Sprechstunde"という面会時間に 必ず研究室まで出向く必要があります.その時間外に質問する場合は,あらか じめ予約を取らなくてはなりません.
でも,メールだといつでもおかまいなしですね.私は基本的に学生さんに対し てはメールによる質問や相談に無条件に応じてます.これは自分が教員であり, 学生さんを指導する義務があるから.でも,パソコン通信でちょっと知合いに なったからといって,初歩的な質問を送りつけられ,返事を要求されたのでは, やりきれません.何か最近すごくストレスがたまっています.
「他人依存症」,これは別にまあたらしいものではないけれど,パソコン通信は, この悪癖を明らかに顕在化させたと思いますね.
[den 28. April, 1996]
「マルテの日記」に戻る.
Click here for going back to my home page.