11月4日: 「風邪に○○○」の危険性


せっかくの連休なのに,結局風邪はどんどん悪化して,連休明けの授業す らあやしくなってしまった.でも明日は学園祭休み最後の日で授業がないから まあいいや.

風邪薬で思い出したことをひとつ.実証(漢方では体格,体力,体質を「証」 で分類するようです.)の人が風邪をひいた場合,比較的早い段階で「葛根湯」 あるいは人によっては「麻黄湯」を服用させると一晩でウソのように回復する ことがある.

実証の典型みたいなうちの夫も,発熱して明らかに風邪と思われる時に葛 根湯を煎じてのませるとケロッとよくなることがある.

多分世の中に葛根湯の適応者は多いと思う.

ところが問題は,「葛根湯」を服用するとスグ風邪がなおる,というよう な意味の宣伝がしばしばなされていること.新薬(西洋薬)の場合,患者の「証」 によって薬をかえるということは少ないと思う.が,漢方ではものすごく細か い症状を調べてからその人の証と病気の段階にあった薬を作る(オーダーメイ ド)のが当たり前だ.

人によって,また病気の段階によっては,葛根湯は卓効を奏するが,別の 人にはきかないかもしれない.私の場合,葛根湯を服用すると効果がないだけ でなく,心臓が爆発しそうに苦しくなる.私は典型的虚証なのだ.

私にはむしろ,附子(トリカブト)---元来は猛毒!!!---のまざった,身体を 強くあたためる方剤がきくことが多い.例えば麻黄附子細辛湯.この薬を使う と,風邪そのものは退治できないが,咳やくしゃみはすっきり取れる.これを 夫がのめば,多分あつくてあつくてもがき苦しむに違いない.

ところで,CMで「風邪に○○○」なんて気軽に言って葛根湯製剤を宣伝し てません?

虚証の人に葛根湯は無理ですよ.無責任な宣伝はやめてもらいたい.少な くとも売る薬局で,虚証の人にはすすめないようにしてほしいものです.

そういえば,最近「小柴胡湯」で死亡例がでたとかという話がありましたね.

その時,「小柴胡湯」は危険だ,致命的な副作用がある,なんて言われ ませんでした?

その議論はおかしいと思いますよ.「小柴胡湯」の証にあった患者に正しく投 与すれば問題はなかったのかもしれません.要するに漢方の知識のない医療関 係者が,充分に患者の証,病気のステージ,そして薬の使い方を調べずに「小 柴胡湯」を投与したことが問題だったのではありませんか.

最近は町のお医者さんでも「○○湯を下さい」と言えば簡単にその薬を保 険で処方してくれるところがあります.薬局で買うよりも安いので患者として はおねだりしたくなるし,お医者さんも「それ,きくんですか?」と言いなが らも出してくれたりします.私はこの手で何種類もの漢方薬(今いろいろ話題 になっている製薬会社のもの)を手にいれました.

これ,やっぱり危なくありません?

患者もお医者さんも漢方のシロウトなのに薬を処方したり,してもらえる なんて! 儲かるのは製薬業界.

やっぱり

化粧品業界や製薬業界は資本主義の権化である
と言いたくなるんですよねぇ.

患者と医療関係者が一緒になって薬の資本主義的消費連鎖に陥るのを防ぐ 方法はないものでしょうか.

でも,やっぱり溺れる者はワラにもすがる思いなんですよねぇ.明日まで に風邪が完全に直るなんて言われると,どんなあやしい薬でも欲しくなります もん.ドリンク剤はその場限りとわかっていても,「今」頑張るために使って しまうし,睡眠薬はいずれきかなくなるし,やめるとひどいリバウンド症状が 出ることを知っていても,さしせまった仕事のために使わざるを得ないし.

そうそう,こないだ町の薬局へ「ハルシオン」を買いに来た見るからに健 康そうな若者がいました.

不眠治療じゃなくて,ラリるために使うんじゃないの? もちろんその薬局 のご店主は,「処方箋がいります」と断わってました.

うーん,昼間は熱を出して起きられないのに夜になると元気になるのは どういうことなんでしょうね.

今 日誌を書いている私はとても元気です。
こちらにも同類がお一人...
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Author: Kyoko Rikitake <malte@lang.osaka-u.ac.jp>
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