11月6日: 「気」 / 音楽評論


●「気」

学園祭休みも本日にておしまい.休暇中結局風邪は良くならなかった.ま だ熱もあるし喉が痛い.

しかし,気分が「授業」モードになると不思議に起きられて,勉強もでき る.で,週末を含め,ちょっとした休みがあると「気」が抜けて病気になる.

病気はまさに「気」が病むのですね.

不定愁訴で内科に行くと「それは気にせいですよ.」と言われて,いくつ かの検査の結果異常がなければ,別の科(たいていは精神系の診療科)に行けと 言われるのでがっかりするのだが,やはり「気」というのはあるみたいだ.

ある程度規則的に休みが取れて,「気」を抜く余裕のある人はいいが,い つも気がはりつめ,まったく肉体的,精神的に余裕のない人は,心身のガス抜 きができない.それゆえ,身体が不調を訴えた時には,時すでに遅しというこ とが少なくないようだ.

日本のサラリーマンの多くがそうではないか.私など,病気で「気」を抜 いていられる人間はやっぱりサラリーマン失格,しかし人間生活には適応者だっ たりして...

●音楽評論

今夜のBGMは ショパンの「チェロソナタ」.手もとのディスクは,ロスト ロポービッチのチェロにアルヘリッチのピアノ.

この曲をはじめて知ったのは1979年秋,ドイツに留学していた時.大学の コンサートで聞いて非常に感銘を受けた.ショパンの作品はほとんどがピアノ のためのものであって,あまり室内楽はポピュラーではないし,協奏曲に至っ ては,「オーケストラはオマケ」なんて言われる始末.

オーケストラがオマケだったとしたら,ショパンコンクールの本選のオケ はどれほど苦痛だろう.室内楽ではピアノ以外のパートはオマケではないと思う. でも弾きにくそうだ.

最近,ショパンのマイナー(だとされている)作品に関心をいだいている. 私の持っている全音の楽譜の「解説」(ただし,この楽譜は1960年代後半に買っ たもの.)には「この曲は霊感に乏しい」とか平気で書いてある.

たとえば,変ホ長調(Op. 55-2)は,

ショパンのノクターンの中で一番目立たない作品である.
とされているし,

ロ長調(Op. 32-1)のところには,

作品32の2曲は比較的独創性に乏しく,余り演奏されていない.
なんて書いてある.

本当だろうか??? 前者に関しては,イーヴォ・ポゴレリッチの何度聞いて も飽きない甘美な演奏がある! いったいこの演奏を何度聴いたことだろう.繰 り返し聴かずにはいられない.演奏者の解釈次第で作品は甦ると私は信じてい るのだが...

また上記の「比較的独創性に乏しい」2曲(ロ長調と変イ長調)は,今や私が 愛してやまない小さな曲たちだ.楽譜の解説で変な先入観を植えつけられなかっ たら,もっと早く取り組んでいたに違いない.

私は,演奏を聴くあるいは自分で作品に取り組む前に,CD のライナーノー トとか楽譜の解説をなるべく見ないようにしている.以前外国版の LP ばかり 買っていたのは,ライナーノートがあまりないからだった.日本のはそれがチ トうるさいことがある.浅田彰サンのアファナシエフのブラームス演奏論は, 浅田ファンには面白いかもしれないが,私には「そういう考えもあるん?」ぐら いにしか思えない.要するにそれは感想文なのだ.

それから,レコード雑誌の「これがおすすめ」ってのも見ない.

子供の頃,レコ芸,音友にはじまり,かたっぱしからレコード評を読みあ さり,レコードを買ったものだ.また,自分が手がける作品も,「名曲」, 「難曲」とされるものが大半で,「独創性に乏しい」と言われる曲に取り組も うとは思わなかった.

ところが,難しい曲を弾くのはもはや不可能になった今,何の偏見もなく 譜面をくってみることができる.するとどうだろう.宝の山を見つけた気分だ.

上記のショパンのノクターンだって,技術的にはさほど高度ではないにせ よ,実に味わいがあって楽しい.

これからの人生,周囲の声(たいてはコマーシャリズムのそれだ.)に惑わ されることなく,自分で音楽を楽しみますよ.まだバッハという不思議の国が 残っているし.

音楽ネタはもっと書きたいが,余りにも controversial なのとヒマがない のでほどほどにします.

もう,「私は DTM が嫌い」なんて言おうものなら大論争になりそうだか ら.夫とは大声でわめきあいながら論争してます.:-)

音楽がある限り,我が家では永久に大論争と大喧嘩が絶えないのである.:-)

わたしにはチェリビダッケの気持がわかる.えーい,この話はまたにしましょ.


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Author: Kyoko Rikitake <malte@lang.osaka-u.ac.jp>
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