しかし、数年前までは、少なくとも遠方の友人、お世話になった方々など、普 段滅多にお会いすることのない方々にのみ近状報告を兼ねて賀状書きをしてい た。
ところが、この3年か4年ぐらいは、誰にも書かなかった。書けなかったの である。とにかくペンを持つのもしんどい。それぞれの人に伝えたい思いはあ るが、うまく言葉にならない。そして必ず冬休みに入って授業がなくなると、 待ってましたとばかり風邪をひいて年末年始は寝込んでいたので、書く暇がな かった。すでに私の健康状態が鬱病への坂道を転げ落ちていたのだろう。 うつ病関係のページのリンクを辿って専門 家の説明を読んでいただければわかるが、この病気にかかると思考も鈍くなり、 体も動かなくなるのだ。
さて、そのうつ病からかなり(まだ、「かなり」であって「完全に」ではな い)回復した今年は、うまく気持を表現できず悪戦苦闘しながらも、少しばか り書いた。35枚書くのに20枚ぐらい書きつぶしてしまったが。
前置きが長くなったが、今日は、いただいた年賀状についてのお話である。
私が病気で休んでいることを知っている方々からは、あたたかいお言葉を いただき、とても嬉しかった。去年は、「頑張りましょう」というメッセージ が入院中の私に届き、すっかり鬱がひどくなってしまったのだが、今年はみな さん、とても気を遣ってくださっている。本当にありがたいことです。
その中でも短いながらも深く私の心を打った、いや本当に私をして感動に 震えさしめたことばがこれである。
[...]自分を必要としている人がいる限り、生きることが許されるでしょう。
メッセージの最後に記された一文が、ぐさりと胸に刺さった。
入院して以来もう一年以上、うつ病が進行しはじめて以来(推定4年)、この 間、私は本当に何の役にも立たない無能人間であった。委員会で教室からの要 望を伝えねばならない時になって欠席してしまったり、代理の方をお願いした り、授業が始まっても大学に出られず、受講手続き(学生から受講カードを集 めて、整理する)も同僚の先生方にやっていただいたり、そして挙句の果てに、 入院するに至っては授業も担当できなくなり、代講を忙しい同僚諸氏にやって いただいたり、数えればきりがないほどの迷惑人間だったのである。
そしていまだに職場復帰できずに、周囲に迷惑をかけ続けている。同僚に は合わせる顔がなくて、とても一人で職場へ出向くことなどできない。
いや職業上だけの問題ではない。家庭においても夫にかなりの負担を強い て来た。とにかく入院する直前は、彼に荷物を持ってもらって大学の近くまで 送ってもらい、帰りは徒歩10分の距離なのにタクシーを呼んでいたのである。
当然夫の両親に対しても、まともなおつきあいができない状態であった。 関西に来られるお二人の訪問をお断りしてしまったことすらある。
自分の親に対しても、私が具合の悪い時は買物や家事をしてもらって、本 来ならこちらが老親の面倒を見るべきところを、逆に厄介になっていたのだ。
こういったことすべてを考えると、私は、本当に駄目な人間だ、もう何の 役にも立たない、悪くなりこそすれ、良くなる兆は全くない。
私はそういう八方塞がりの状況下、思いつめた。もう役に立たない。仕事 は辞めないと大学に迷惑なんじゃないだろうか、夫は明るく無邪気そうに見え るが、実際は私のことをもうダメだと諦めているのではあるまいか。
希死念慮という形で、 この思いが一気に溢れ出したとすると、本当に自殺してしまったかもしれない。
が、私は思い留まった。「私がいなくなると、親や夫はどうなるんだろう」 という思いが私を生かしてくれた。少なくとも私は夫や親には「必要」とされ ているのだ、という認識はしっかりあった。
しかし、職場ではどうなのだろう。こんなに長く迷惑をかけ続け、仮に復 職したとしても、すぐにはフル回転できない(うつ病の場合、段階的にしか社 会復帰できない)私をまだ必要としてくれるのだろうか。あまりにも恐ろしくて この問いの答はききたくない。
でも、海外に留学中の大学院生とか、以前からの知りあいの学生さんなど から、「また楽しい授業を」と言われると、お世辞とは思いつつも、やはり私 は必要とされているのかもしれない、と思うのだ。単位を簡単に出す教師だから 必要とされているのではあるまい。(その可能性もあるが。)
組織人としてはもう完全に失格であるが、それでも私に、「必要とされる 何か」が残っているであろうか。
復職への道はまだとても険しい。しかし、今一度同僚たちと話しあったり、 学生と意見の交換をしてみたい。
でもやっぱり
私は必要な人間なのだろうか。
Author: Kyoko Rikitake
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