子供の教育とコンピュータ [12-Jan-1999]


先日、私の参加しているメーリングリストで、ある人が小学生の子供を持 つ知り合いに、「この4月から小学校でコンピュータ教育が導入されることに なった。子供がもしコンピュータを使った授業について行けなくなったら困る ので、自分(母親)がコンピュータを購入して、まず自分(母親)が練習し、そし て子供にも使わせてみたいが、どういう機種がいいのか」という相談を受けた という趣旨の投稿があった。

そもそもコンピュータ関係に詳しい人の多いメーリングリストだったので、 すぐに怒涛のごとくレスポンスがあった。中でも、最近発売された iMac をす すめる声が比較的多かった。逆にマック大反対論者もいたし、いや、今一番よく 使われているのは Windows だから、周囲に使用者の多い Windows がいいので はないか、という人もいた。

数日間にわたって、議論はあっちこっち飛び火しながら白熱した。そこで、 ちょっと私の考えたことをメモしておく。

そもそも世間のコンピュータ強迫神経症(?)は尋常ではない。たしかに AERA 1月18日号でも「就職を決めるパソコン能力」という記事で、「米国では パソコンが使えないと就職が難しい」などと書いている。(ちょっと煽ってい る気がしないでもないが。)

また、小学校にコンピュータが導入されるとなると、上記の質問者のよう に子供が取り残されるのではないかと躍起になる。実際今の世の中パソコンは 使えて当たり前なのかもしれないのだが、ちょっと子供の教育に関しては待っ てよ、と私は言いたい。

大人の場合、少なくとも業務で使う目的がはっきりしているから、会社で 使うソフトウエアは使えないといけないし、通信なども業務に必要ならば覚え なくてはならない。だから、そのためのパソコンスクールがあってもいいし、 また会社にパソコン救援部隊(ヘルプデスクと言うんでしょうか。)が必要かも しれない。

が、話が子供のことになると私は事情は異ると思うのだ。マックを使わせ ていたら、学校はWindowsだった、なんてことになると困る、とか、学校で教 える以前に使い方を家で教えこまないと子供が苦労する、なんて考えるのは、 まったく無駄な心配だと思う。

だいたい、母親が子供にコンピュータを買って、いや、まず自分がコンピュー タを使って何をやってみるのだろうか? しっかりと「これをやる」という目的 があるのだろうか? 目的もなく、のんべんだらりとマシンに向かっていても、 いずれはマシンは「ただの箱」あるいは「家具の一部」となってしまう。子供 にパソコンで何をやらせたいのか、母親は考えてコンピュータを選ぶのだろう か。

パソコンは使い方次第で万能の道具たり得る。しかし、何にどう使うとい う目的がなければ、良くて文房具、悪ければただの上等のファミコンに留まる。

学校で何の科目で、どういうふうにコンピュータを使うのか、それを確認 してから家に一台買っても遅くないと思うが。初歩的インターフェイスだけ (マウスの使いかた、入力方法など)でも教えておきたいという気持もわかるが、 そもそも子供というのは、我々大人にはない能力を備えていると私は思ってい る。

自分が興味のあることならば、教えなくてもいつの間にか試行錯誤して覚 えていたり、人に教わってくるものだと思う。子供の好奇心というのは素晴し い。子供は興味のあることには執着する。ゲームをするのに彼らはいちいちマ ニュアルを読んでゲームマシンを使っているだろうか?

だから、自宅でマックを使っていても、学校で Windows を使うとなると、 それなりに覚えるに違いない。まあ、その辺は指導者がどれくらい上手にイン ターフェイス教育をできるかという現実も絡んでくるが。家でマックを使って いて職場で Windows だといきなりパニックになるのは、「業務」というもの で縛られている大人だけじゃないだろうか? 子供も「成績」に縛られていると 反論しますか? そもそも、コンピュータは小学校段階では、何かを理解するた めの道具程度の使いかたで充分だと思う。とならば、どれくらい使いこなせる かテストして成績をつけるほどのこともなかろう。

小学校の教育にコンピュータ導入、となってあわてふためいているのは親 だけではないだろうか。子供は案外適応してしまうと思うのだが。

ただ、コンピュータも楽器や学科などと同様、ある程度適性というものが ある。中にはどうしてもコンピュータになじめない子もいるだろう。しかし、 小学校ですでに自分で積極的に操作できる必要があるのだろうか。できない子 がいても、それはそれでいいではないか。

教育する側(学校)が、すべての生徒に一律に同じ範囲のコンピュータの使 い方を覚えさせ、できない子はできるまで補習させる、などというこれまでに ありがちだった指導方針を取らないことを私としては望む。見るだけの子がい てもいいではないか。いずれ関心があれば、どうにでもして自分で操作するよ うになるのだから。

たとえが悪いが、思春期になれば、異性とか異性の画像などを求めていつ の間にかインターネットサーフィンしている子もでてくるだろう。

とにかく、小学生全部に無理矢理インターフェイス教育を強制するのは良くない。

だが、それ以前に親が「コンピュータができないと、勉強がおくれる。将 来は就職で不利になる」などと先取りして考えるのは、本当にナンセンス以外 の何ものでもない。

ちなみに私は Windows をほとんど使えない。唯一 RealAudio で海外の放 送を聞くために使っているので、私にとって Windowsマシンは「ラジオ」に過 ぎない。それ以上の使い道を私は知らない。読み書きは、UNIXで充分。こ れも、たまたま夫が UNIX の管理者であり、家庭内LANが UNIX ベースである からに過ぎない。偶然である。独身だったら、ずっとマックを使い続けていた だろう。OSが新しくなるたびにシステムエラーに悩まされ、ソフトウエアのバー ジョンアップごとにトラブルを抱えながら。

何で小学校のコンピュータ授業くらいで親が焦りまくるのだろう?

私には理解できない。もっとも、私が子供を持ったことがないから親心が わからないのだ、と言われてしまえば、それまでだが。


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Author: Kyoko Rikitake <malte@k2r.org>
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