1998年12月31日、新通貨「ユーロ」に対する加盟国の通貨レートが確定さ れ、1999年1月1日をもって現在加盟しているヨーロッパ11か国の通貨が統一さ れた、厳密には当分「ユーロ」に対する固定相場制になった。当分というのは 移行期間の3年間で、移行期間が終了すると、本当に該当国家の通貨は「ユー ロ」だけになってしまう。
この経緯をテレビをよびラジオで観察していたのだが、もう、そりゃあド イツ語の教科書の例文にしたいような文が出てきました。
1998年12月末時点、フランクフルト証券取引所の入口(?)の上に、
"Der Euro kommt."と掲示されていた。「ユーロがやって来る」
明けて1999年元旦には、
"Der Euro ist da."になっていた。「ユーロがやって来た」
「やってくる」という確実な未来について述べるのに現在形が、そしてす でにやってきたという状態を述べるのに完了形ではなく現在形が使われている のは、....とドイツ語の時制の話をしたくて仕方がないのだが、まあ、それは また「外国語喫茶」を復活させてから書くとして、とにかくフランクフルト証 券取引所の看板に登るぐらいだから、大変なことなのである。
貨幣が統一されるということは、その加盟国家が経済共同体としてひとつ になることを意味すると思う。とすると、今はまだ加盟国が11しかないが(イ ギリスが参加しないのは不思議だ。そのうち参加する?)それでも、ドイツ、フ ランスを含め、ヨーロッパはまさにEU(ヨーロッパ共同体)としての経済的実体 を持つことになる。
ヨーロッパが中小国家の寄り合い所帯ではなく、ゆるやかではあっても連 合として経済力を持つとすると、アメリカ合州国など、一種の脅威を感じるの ではあるまいか。私はアメリカ合州国の反応が気になる。大統領の弾劾なんか より、そっちのほうがもっと大きな問題だろう。
これは日本、あるいは米国にしか住んだことのない人にはなかなか理解し がたい発想なのだが、ヨーロッパに住んでいると隣国は本当にお隣りさんで、 下手に喧嘩すると非常に困った事態が発生しかねない。フランスが核実験を強 行した時も、隣国のドイツは日本やアメリカほど激しく正面から非難の声を浴 びせなかった。非常に歯切れの悪いコメントをしていたように思う。私はそれ を不思議に思ったのだが、いや、あたりまえだ。隣なんだから、変に挑発する と陸からでも空からでも攻めて来られる。戦争にならないにしても、おたがい 物資を融通しあっている関係なのだから、フランスから兵糧ぜめにでもあった ら大変だ。
ヨーロッパで暮らしていると、近隣の国とはとにかく(たとえ嫌いでも)表 面的には仲良くやって行かねばならないことを痛感する。だいたい隣国どうし というのは仲が悪いものだと思う。日本と韓国あるいは中国の関係を見てもわ かるだろう。過去の侵略だとか搾取に関してやたら日本は謝りまくっているで はないか。小渕さんが本気でそう思っているのかどうかは知らないが、とにか く江沢民さんが日本へ来るや謝っていたし、韓国に対しても、金大中さんにも 謝罪していた。要するに隣国とのおつきあいはむつかしいのだ。
これがヨーロッパになると日本と韓国、中国ほども海を隔てた距離がない。 だから、どれほど「なあなあ」になってもうまくやって行かないといけないか はわかるだろう。それができないとなると、たとえばギリシャがマケドニアを 「マケドニア」という国家として認めたくないとか、いろいろギクシャクした 紛争が生じるのだ。
さて、政治的な話は全然得意でないので、現実的な話を。
先日ドイツの書店に十 数冊本を注文したのだが、今のところマルク表示であった。が、テレビを見る と、どこもかしこも現地通貨とユーロ通貨の二本だてで値札がついている。
3年後には、加盟国ではもはやマルクもフランもシリングもなくなり、ユー ロだけになる。すると、鉄道の運賃にはじまり、書籍の値段、ありとあらゆる ものが同じ値段になってしまうわけだ。たとえば仮にベルギーで発行された本 を海外通販で購入するとしよう。今なら、ドイツで買ったほうが安いか、フラ ンスで買ったほうが得か、やっぱり本国ベルギーの通販を見つけて買ったほう がいいか、選択の余地がある。
これが3年後には全く同じになってしまうのだ。どの国で買っても同じ値段に なる。
ユーロ(ドイツ人は「オイロ」と読んでいる)は、今ヨーロッパを大西洋の向こ うの国にせまる経済圏を形成しようとしているのだろうか。
ところで、3年後にユーロ使用国家は今の11からいくつに増えていることだろ う?
変な話だが、先年ケベックに行って、ケベックは北米というよりヨーロッ パという気がした。事実地図を見てもきわめてヨーロッパに近い。文化的にも フランス的だ。何かケベックでユーロが流通するようになってもあまり抵抗が ないような気がする。(しかし、これはケベック独立運動という厄介な問題を はらんでいるので、あまりそうあってほしいとは思わない。)
ところで、先日ドイツの書店に注文した本の代金は、マルクで請求され るか、ユーロか、ちょっとクレジットの請求書を見るのが楽しみである。
Author: Kyoko Rikitake
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