SOHO or Working from Home の問題点 [21-Jan-1999]


SOHOという語をご存じだろうか。けっこう最近よく使われているようだが、 語源はともかく、Small Office, Home Office の意味で使われているようだ。

大都市圏での通勤はまさに痛勤である。もしオフィスに必ずしも出勤しな くても仕事ができるようだと、それに越したことはない。

我が家も一種の SOHO である。夫の仕事はコンピュータネットワーク関係 なので、会社も自宅もインターネットとは常時接続されている。だから、仕事 の大半は自宅でできる。もっともハードウエアの設定とか会議、出張となると 出かけないわけには行かないが。

その夫が今、約3週間の予定で休みを取っている。なぜか。いろいろ事情は あるが、最大の原因は、自宅にいても24時間業務から自由になれないからであ る。最近疲労感が強く、情緒不安定になることが多く、不眠もみられるように なったので、まず医者に行かせた。SOHOのことなど話したところ、やはり家で 仕事ができるのは便利でも、逆に24時間何が入って来るかわからない環境は疲 れるので、しばらく休むのがよかろうということになった。

これは私自身のあまり思いだしたくない苦い記憶とも結びつく。私の研究 室と自宅のサーバーはインターネットを介して接続されており、いつでも家に いて研究室あてのメールや資料を読むことができたし、逆も可能だった。その 接続は、ssh というセキュリティ・レベルの高い暗号化によるものであり、プ ロバイダを利用するよりも遥かに信頼性の高いものだった。しばしば阪大のネッ トワークが工事や事故で不通になったものだが、その時も電話(モデム)経由で 接続できた。

が、これが結局私のストレスの原因となり、精神の崩壊および入院、療養 という結果に至ったのである。学生さんからの質問メールや答案などはいいの だが、それ以外の猛烈なスピードで次々に押し寄せてくるメールやメーリング リストですっかり神経を消耗してしまったのである。私の場合、仕事と家庭は やはり分けるべきだった。夜寝るまえにちょいとコンピュータを見ると、何や ら緊急性の高いメールが来ている。もし自宅で接続していなければ、翌朝出勤 するまで見ることがないはずのメールである。ついそれに反応しているうちに 夜はどんどん更けてゆき、完全に体は概日周期(おてんと様に同期した体の周 期)を失い、結果ひどい自律神経失調を来すことになった。

それゆえ、休職中の現在、研究室に来るメールは読まない。またwebサーバ も落としている。(ひとつには、私が不在では管理できないからである。)

さて、話は戻るが、夫はめでたく休みを取って休養できることになったのだが、 これが、いまいちパッとしない。

彼の休暇の定義は、会社の業務をめぐるメールやIRCを見ない、反応しない、 ということである。

にもかかわらず、やっぱり夫は落ちつかない。読むメーリングリストも最 小限に減らしているらしいが、私から見れば「なんや、いっつもと同じやんか。 ハイキングとか美術館巡りを一緒にしてくれるとかいうのは、どないなったん やろ。」という感じ。

いや、まだ休暇3日目だし、おまけにこの3日間、私のほうがほとんど寝こ んでいたのである。だから、ハイキングは無理としても、あんまり変わりばえ のしない生活をしているように思える。運動しないと太りすぎが解消できない んだから、もっと積極的に外に出るとか、固い体をストレッチングでほぐすと か、どうしてそういう方向に行かないのだろう。

これは長い間SOHOという生活をやって来た習い性というものではないか。 家にいてもマシンに向かっていないと落ちつかない。外を目的もなく「散歩」 するなんて贅沢はとてもやる気にならない。

私は今体力回復のために日常的に(この数日間は無理だったが)散歩を楽し むようにしている。何しろ入院する前は10分の距離が歩けなかったのである。 家事も積極的にやっている。そうしているうちに心そのものが解放され、密室 に籠もる生活の不健康さを痛感している。

SOHO は確かに良い。便利だし、服装にかまう必要もないので肩がこらない。

しかし、密室で日がな一日コンピュータに向かっているという習性をあら ためないと、病気になってしまう。また、「仕事」と「家庭」の区別はしっか りつけるべきだ。

以前など、夕食をとりながら、数分おきに夫がコンピュータを見にいくの で激怒したことがある。今でも時々それをやるが、私のようにある程度ネット ワークに関係している奥さんなら理解もしてくれるかもしれないが、普通の主 婦や子供たちは「お父さん」のそういう姿を決して快く思わないだろう。

SOHO を実践している方々へ。ご家族の同意と協力を得ていますか?


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Author: Kyoko Rikitake <malte@k2r.org>
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