白梅の香り [3-Mar-1999]


今日は雛祭。子供の頃、我が家に飾ってあった、たぶん母親の代からのも のと思われる大きな雛段のお雛さまたちは、昼間に見ると優雅で楽しそうなの に、夜に見ると何となく怖くて、あまり近づけなかったことを思いだす。

私は小さい子供の頃から人形とかぬいぐるみなどにそれぞれの「いのち」 があるような気がして、粗末に扱えなかった。

もう中年の域に達した今でも、たくさんのぬいぐるみを飾っているが、そ れぞれに名前と「たましい」を与えてある。いや、そのつもりである。夫も同 じようにぬいぐるみたちを可愛がっている。大の大人がぬいぐるみで遊ぶなん て、精神的におかしいんじゃないの、と言われそうだが、どうしても人形やぬ いぐるみには「いのち」があるような気がして、打ち捨てることができない。

「子供のない夫婦って気の毒ね」

などという声もきこえて来そうだが、たぶん子供がいてもぬいぐるみや人 形を大事にすると思う。いや、子供がおもちゃにしてしまうから、ぬいぐるみ は買わないかもしれない。ドイツに居た頃、居候していた家の子供がぬいぐる みを投げたり、蹴ったり、手荒なことをすると、よその子ながら叱りとばして いた。

今の家にはもう雛段はない。今年は、夫の母が送ってくださった雛段の形 をした豪華なグリーティングカード(開くと立体になるカード)を本棚に飾って、 夫と二人で雛祭気分である。いや、白酒はいただかないが。

ところで、今日は実に穏かな良い天気であった。この冬の間、日課の散歩 もせず、ほとんど家に閉じ籠りきりであった私だが、今日は陽気に誘われてふ らりと外へ出た。暖くなって、天気が良くなれば、たぶん鬱状態は快方に向か いますよ、という主治医の言葉通り、少し気分が楽になって来た。まだ相変ら ず外出する時には抗不安剤が必要だが。

近くのお屋敷町を歩いていると、庭先に白梅が咲いていた。近づくと、ご くごくほんのりとした香りがする。そして、いつも通る公園では白梅がほとん ど満開。決して強い香りではないのだが、とっても魅きつけられて、しばらく たたずんでいた。

香り。この不思議なるもの。

私は花や樹々の匂いが好きだ。深い森の中の老木を覆う苔の匂いにも魅かれ る。アロマセラピーで使う花や樹などの精油やアブソリュート(溶剤に植物の 香りを吸いとり、次にその溶剤を除去して作られるもの)の香りは、非常に濃 縮されていて、生の花や樹の香りとはずいぶん違う。ましてや人工の香料など 生の香りにはとても及ばない。私は強力な人工香料を多用して作られた最近の キツイ香水類が大嫌いだ。

私が一番季節を感じるのは、花や植物の匂いなのである。風にも匂いがあ ると思いませんか? 私は快い香りにふれると不思議に心がリラックスします。

梅の花にまさに良い季節を感じた桃の節句でありました。

今夜はおだやかなラベンダーと妖しいばかりに香しいイランイランの花の 精油をアロマポットに入れて、香りを楽しみながら眠りにつくことにしよう。

まったくまとまりのない日記でした。


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Author: Kyoko Rikitake <malte@k2r.org>
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