うつ病で自宅静養中だということだったが、うつ病というのは、決して治 療困難な病気というわけではない。適切な治療(薬物療法、精神療法など)を受 け、充分な休養をとれば、治るはずの病気なのだ。
治療効果のの比較的あげやすい病気であるにもかかわらず、うつ病は一番 死に近い病気だ。それはなぜなら、 希死念慮を伴うからだ。
なおかつ、うつ病は、その人の性格に由来するところが多い。几帳面、真 面目、律義、強い向上心など、完全主義的な性格の持ち主がかかりやすい。で もっていくら薬で心身の状態の改善はできても、性格までは変えられない。だ から、結局自殺してしまったり、何度も入院するようになる。
うつ病になると精神力も体力も衰える。が、元来完全主義的な性格はそれ を認めたがらないし、無理矢理頑張ろうとする。そういう自分を許せないから だ。そして、ますます疲弊してどん底まで落ちてゆく。そして希死念慮にとら われる。どん底の時は、歩くことも困難なので、自殺すらできない。しかし、 少し快方に向いはじめると、今度は「自殺する元気」が出てしまうのだ。
だから、うつ病は初期のまだ力の残っている時と、回復期が最も危険なのだ。
死なない程度に薬を大量服用したり、手首を繰り返し切ったりする人の多 くは、厳密にはうつ病ではないらしい。(もちろん鬱の人もいるが。)うつ病の 人間は絶対に失敗しない方法で死のうとするところもまた完全主義なのだ。
枝雀が自殺をはかったと聞いた時、もう二度と彼は舞台には現れないだろ うと思った。自殺を完遂するか、あるいは仮に生きのびたとて、また同じ試み をやるであろうと思ったのだ。
心身ともに疲弊し、希望の持てない病気、それは外見は他の精神疾患と比 べれば軽症のようであっても、実は深刻さにおいては何ら変わるところはない。
私は今その回復期にあるが、正直言って、非常に低調である。体力が戻らない。 思考が収束しない。考えれば考えるほど社会復帰が困難に思えてくる。
でも、「死なない約束」だけはしておこう。夫に、親に、そして主治医に。
この数日、自宅療養記の残りを 綴っていた。まだ少し記述すべきところが残っているが、読み返してみて、 ずいぶん辛い日々だったのだなあ、と驚く。いや、今だって充分辛いが。
故人に合掌。
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Author: Kyoko Rikitake
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